2014-09-30

「藺を引けば灯心が出まする」— 概説 狂言「以呂波」のこと

かねてより、

第7回徳讃会は演目の解説がありませんという旨、お伝えしていたかと思うのですが、その代わり、こちらのブログで、ごく簡単に(僕の理解した範囲で)解説を試みておこうかと思います。
※多少ネタバレ?はあるかも知れません。悪しからず^^; 

さて、

初番の狂言「以呂波」に出てくる「いろは」ですが…。Wikipediaの記述を引用しますと、
いろは歌(いろはうた)とは、すべての仮名を重複させずに使って作られた誦文のこと。七五調今様の形式となっている。のちに手習いの手本として広く受容され、近代にいたるまで用いられた。また、その仮名の配列は「いろは順」として中世から近世辞書類や番号付け等に広く利用された。ここから「いろは」は初歩の初歩として、あるいは仮名を重複させないもの、すなわち仮名尽しの代名詞としての意味も持つ。”
いろはにほへと ちりぬるを   色は匂えど 散りぬるを
わかよたれそ つねならむ    我が世誰そ 常ならむ
うゐのおくやま けふこえて   有為の奥山 今日越えて
あさきゆめみし ゑひもせす   浅き夢見し 酔ひもせず

大まかにまとめると、すべてのひらがなを重複しないように使って、詠んだ歌ということになります。
「京」というのは拗音(ちっちゃな「ゃ」「ゅ」「ょ」のこと)を習わせるために付け加えたとか……(へぇぇぇ!そうなんや(゜o゜;)


で。

「作者は誰なんか!?」ってハナシですが。
狂言「以呂波」の中では、「高野の弘法大師の作らせられた、四十八文字の『いろは』というがある…」と述べていますが、現代の学説では確証はないようです(どちらかと言えば否定的?)

写真は、京都の東寺へ参った折(骨董市)に、息子殿に見せたろと思って撮影してきた分です。
弘法大師(空海)



一説には、弘法大師とは異なる別の作者が、遺恨を詠み込んだ「暗号説」という話もあり、「咎無くて、死す」という文言を読めるとかΣ(゜д゜

さてさて。

狂言「以呂波」は、親が子どもに「手習い」(読み書き)を教えるのに難渋するというお話(これまたザックリとしたまとめだナ…^^; )なのですが、そのなかでも当時の風習を知らないと少し分からないかも。という事柄に少し触れておきたいと思います。

途中、親と子の対話が「連想ゲーム」のような様相になってくるわけですが、「藺(い)を引けば灯心が出まする。」という言葉があります。
「いろは」の「い」に連想して「藺」について、子が述べるわけです。

これは、古くは「藺:い草」のを灯明油に浸して照明にした事によります。

☞い草の栽培は、こちらのブログ(奈良県安堵町の伝統産業 灯芯引き)を御参照下さい。

☞灯明の点灯に際しては、こちらのお店の販売サイト(油でともす和の灯り、臭いもなくモダンです)を参考にしました。

我が師に尋ねると、
「灯明油は仏具屋にあるんとちゃうか?」
とのことで、職場近くの仏具屋さん、地元の仏具屋さんをハシゴしてみましたけれども、1軒は業務用の一斗缶での販売のみ、もう1軒は取り扱いなし。さらにもう1軒は「ウチでは取り扱ってないけど、菜種油を探さはったらヨロシで?」とのこと……。(せやかて、スーパーで、普通に菜種油なんか売ってへんがな^^; )

4軒目も回ったのですが、そこは既にお店畳んではりました(…ので、ここで力尽き、Amazon大先生にお伺いする事にしました。)

ははぁ…。

さすがは、Amazonには何でもあります。
しかし、灯明油は何だか割高なんですよね^^;
そこで、ふと思い出しました。「灯明油は、菜種油や!」って話。
じゃ、この際、菜種油の風味にも個人的には興味があるし、菜種油買うとこかい!ってことで、食用菜種油をAmazonで買い求めました。


亡祖父、

玄三郎の遺品を整理した折に、「あ。灯心あるわ。これ、『以呂波』の解説に使えるな。」という事は、前から思っていたのです。
ですので、Amazonで買い求めたのは、菜種油のみになります。(なんと、灯心も売ってましたけども!)

また、右下の丸いのが、「灯明皿」と呼ばれるものでしょう。その下には「受け皿」があって、2重になってます。皿の中央に乗っているのは「掻き立て」と呼ばれるものですね。

以前に確認したときは、箱の中身を精査しなかったのですが、祖父の記した覚書が入っていました。
先達が用いた、いにしえの照明器具の参考として、また以呂波の参考品として、後世に伝えるために、灯心などを探し求めた旨、書かれています。

…ありがとう、爺さま。こうしてブログになりました。
はい。そしてこれが灯心です。
祖父は、3束買い求めてたみたいですが、1束は既に封切られていました。

触るとふわふわした感じがします。

実際に菜種油に浸して(割とすぐに浸透します)着火するわけですが、上記の引用したお店の内容に従い、3本に火を付けました。

明るさは文字が何とか読める感じでしょうか。
燃焼中は、臭いもさほど気になりませんでしたが、消火後、少し別室に外して戻ってきたところ、割と臭いが気になったので、やはり最終的には換気扇を回しました。(煙もあまり出ない印象ですが、油の質によるのでしょうか?)

燃焼時間。

おおよそ、30分というところでしょうか。個人的な印象としては、割とすぐに油がなくなるなぁ……という感じです。この調子だと、大きな灯明皿にでもしない限りは、すぐに継ぎ足していかなければならないような気がします。

そして、菜種油のお味。

卵焼きを作ってみました。独特の風味があるのですが、これは好みが分かれるところかも知れません。(僕はわりと好きです。)
ただ、オリーブオイルのような洋風なイメージを持ってると、思いっきりガクッとくるかも知れません。和風の炒飯とかに良さそうです。(和風炒飯は祖母に教わった料理です。)

さて。次に「ろ」。

「ふねにはろかいがいりまする。」と、「いろは」の「ろ」に反応して子は言いますが、これは「船には艫と櫂が要ります!」と言っています。
しかし、適当な写真がありませんし、身近で撮影に行けそうなところも思い当たりませんので、こちらのサイト(艪櫂用語)を参考にしました(第2項と4項が該当するかと思います。)

そして。「ちり」。

「ちりぬるをわか」の「ちり」ですが、これと「塵」を掛けるわけですね。
「ろ」から「はにほへと」が飛んでしまっていますが、あんまり余計な事を子が言うので、親もちょっとイラッ!として忘れたのかも知れませんね^^;

いずれにしても、猪口才な子どもである事は確かです(実はリアルでもそうです(-。-;) )

最後は……。

現代ではちょっとアレな内容?なのかも知れませんが、今も昔も子育てには苦労したんだなぁ…(-。-;) という事が、身につまされてよく解るのです(ええ。ごく個人的にですが。)

ま。そんなわけで。
息子殿にはきっとはまり役なんだろう。と思うのですが……(笑)

第7回「狂言を楽しむ 徳讃会」のチケットは、明日10月1日からお申し込み受け付け開始です。全席60席(お申し込み順)となっています。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

2014-09-29

お稽古_⑬ 正座ができるようになりました。

左(だったかな?)膝蓋骨付近に縦方向の裂傷を負っていましたが、ようやく傷口も塞がって、Dr.氏よりケロイドの心配もない。ということから膝を曲げても良い旨の許可が出ました。
これで、舞台の上で座つく事ができます。

これに伴いまして、前回までは幕から出て、(便宜上)常座付近に立たせていましたが、これからは座らせる事に。

言葉も少し考えるとスラスラと出てくるようになりました……が、少し考えるが空いてしまうんですね。
ま。それは、今後の課題としましょう。慣れも必要でしょう。
ウチの息子殿は、気分が乗るとグイグイ来るんですけども……ねぇ。(ホンマ難儀な人や…^^; )

さてさて。
いよいよ次回の稽古(10/4)からじぃじと合わせてお稽古を予定しています。また違う雰囲気の中で上手くできるでしょうか……。
まずは、とーちゃんが日頃、ちゃんと稽古をしている!という姿を見せてやる事が必要なようですね(笑)

2014-09-26

もう3年になりますかぁ……。

今日は祖父 善竹玄三郎の命日です。
存命であれば、満100歳です。

うむ。
まぁ、所与の条件(あるいは笧?)の中で、僕は僕なりに精一杯やっていますよね(……たぶん。☜と、ちょっと自画自賛 笑)
玄翁にはまっこと歯痒い事かも知れませんが……^^;

玄翁の築いたリソースがあればこそ、僕はある意味、楽をしております。
このリソースを食い潰すのではなく、何かしらの付加価値を付けて、次代に託せるようにしたいと思っています。

さて、今日は。
新しく複製を頼んでいた善竹彌五郎翁の写真を引取りに参ります。
こうして、史料などをキチンと繋いでいく事も、我が法人の使命と考えています。

2014-09-25

お稽古_⑫(補習) 立ち稽古おさらい

火曜日(祝)はごくごく軽くに立ち稽古をしてみました。

まず稽古を始める旨のあいさつをして(まだ正座できません。24日に傷口を見ましたが、まだ塞がってなかったです。)舞台の上で体操をします。
これは非常に楽しそうに取り組みます。脱力を目的にクネクネしながらやるからかも知れません。(あ!今度から笑いヨガをやってみようか!?)

そのあと……揚げ幕の裏側に立って、まず立ち方ですね。幼稚園児にイメージしてもらえるよう、「おならブー!のポーズ!!」(そういう動画があるんです☜うちの子ら、めっさ大好物(-_-) )と仮に称しています(済みませんね、ヴィロウな話で^^; )
ま、違うんですけどね!!(ここは強調しておきたい……)
※諸兄諸姉におかれましては、僕の苦心・腐心を御賢察いただければ幸いです(>_<。。。 ふざけているつもりは毛頭ございません^^; 

芸事に「楽しさ」を求めるべきものではないのかも知れませんが、まぁ、今ぐらい〜小学生低学年くらいまではいいんじゃないかと思ったり、思わなかったり……^^;
悩ましいところです。

さてこれが、ある程度、こなれてくる(?)のにどれぐらいかかるのでしょうか……。
僕は中2の頃に「あ。こういう時は、こうなるんだね。」というある種の定型化ができた(直感的に解るようになった)ような気がします。
「あー!そーなんや!!」というのがアハ!って分かったときは割と衝撃でしたから(よっぽど、僕の理解力が低かったのか^^; )

ま。10年でしょうか……。

2014-09-24

たまには、小職のことでも。

……たまには、僕の事でも(え?そんな情報要らん???)
息子殿は、ボチボチと馴染んできてる……ハズです。

さてさて、僕の方はですね。
息子へ伝授しながら、自分の事もやって行かんとアカンわけですね(もちろん、法人の運営のための事務仕事なども並行して。)
第7回「狂言を楽しむ 徳讃会」では僕は「棒縛」のシテ(次郎冠者)と「柿山伏」のアド(畑主)に役が付いています。(もとい、付けています。→これは秘密ですが、自分のやった事ない演目、役から付けてます。済みません^^;

まぁね。
残念ながら、僕に「シテ」が付く事はまずありません。なので、自分で自分に配役して、自分でプロデュースするしかないわけですね(;^_^A
そんなわけで、棒縛のシテは、なんと披きでございます(笑)あんなにポピュラーなのにねぇ!!(主人のお役を頂戴した事はありますが……。)
→僕がシテをやっているところを御覧になりたければ、ぜ ひ 徳 讃 会 へ 足 を お 運 び 下 さ い !!(爆)

ま、もっとも。
祖父玄三郎や我が師からの教えを踏襲して、基本的に徳讃会にご出演をお願いした狂言方には、なるべくシテかシテに準ずるお役をお願いしています。
→だってその方がモチベーション上がるやん!?(笑)え?上がんない???^^; 

週末に我が師より稽古を付けてもらうわけですが……。
他にも週末には研修やら資格の更新などもあります(自費……orz)

先日には前回の受講から2年経ったので、資格更新講習を受け、まぁなんとか更新できました。
次回は何かガイドラインが変更されるような事をいうてはったので、また内容が変わるのかも知れません。
※ちなみにコレは心肺蘇生法の資格です。





友人が、趣味の民謡の舞台に立つとの事で拝見に伺ったりも……
※別にスカウトしようというつもりではありません(笑)










地元にいながら、高槻現代劇場の中ホールには入った事がありませんで^^;

※ホール入り口のロビーですが、皆さんここで飲食されてました。
実は、ここ。
仮設の能舞台を組めるのですナ。

いつか、ここで徳讃会を……!!
という思いもあったり、なかったり!?^^;

なかなかお誂え向きのホールだと思いましたが……。
※偵察…ってわけでもないです。



そして。
平日は病院勤めをして、二足の草鞋を履いておりますと、電車やバスなどの移動時間が貴重なメモライズの時間となります。(意外と覚えられるもんですよ?30分もありませんが。)
そのため、ちょっとまた自転車通勤はお休み中です。

ここまで開帳するのもどうかと思いましたけれども^^; これは僕が覚えるように編集した「棒縛」の台本です。

上段にシテ(自分)の言葉、下段にアド(太郎冠者と主人)の言葉を配しています。
※あくまでも、僕個人が科白を覚えるためだけのものです。

こうやって写す事でも視覚的に言葉が頭に入るという効果もある……のかな!?
でも基本は、稽古場で実際に声を出しながら、自分の声を耳で聞いて覚えていく方が手っ取り早いです。

まさに!!器用貧乏暇無しの見本市みたいなもんですナ……あはははは(笑)

以上!!続きは次回の講釈まで。

2014-09-22

お稽古_⑪ 立ち稽古

土曜日。
膝の負傷で正座ができない(傷口が開くため、90°以上は曲げてはダメと。☜いや、遊びに夢中なときは何気に曲げとるけどね(--;) )ので、はてさてどうしたものか……。と
本人は傷の痛みもなく、至ってやる気はあるようなので、稽古はやろうと思うのだけれども、ドクターストップで座る事はできない。
→必然的に立ち稽古に移行ということになりました。(僕が以呂波をやったときのDVDを見せて、事前に映像学習してね。)

そして、実際に立って稽古を始めてみると……。「あ。そうそう、これも教えないと!」ってことが、わんさかあることに改めて気付きました。

そうなんよねぇ……。
立っている姿勢もそうだし、摺り足の歩き方もそうだし。幕が揚がってからどういうタイミングで出て行くのか。ってこともそうだし……。お扇子の扱いも、舞台に立つ前の段階の作法ということで覚えておかなければ……。
普段、何気なく自分がやっている事を逐一、教えていく必要があるのですね……(°□°;)
(靱猿の小猿とはまた違う新鮮さがあります^^; )

で。
懸案の言葉はというと…。
僕自身が型を教わってるときは、あまり科白では逐一怒られなかった記憶があります。ひとまずは、大まかに全体の動きを把握してしまってから、今度は科白と型(所作)を細かくすり合わせていくことになります。

まだ始まったばかりで何とも言えませんが、第7回徳讃会まであと55日です。10月にはじぃじとも合わせていかなければなりません^^;
月曜には、摺り足で歩く稽古だけをしてみようか……。

2014-09-19

負傷の息子(≒不肖の息子)

なんやもう、ほんま。色々ありますな。
昨日、息子殿は幼稚園から帰宅して、玄関の敷居あたりで、四つん這いでハイハイをしていた!?(何でそんな事してたんかは、不詳。幼稚園児、訳ワカラン^^; )らしくて、膝小僧を約30mmほど切ったとのこと。

切創はパックリと割れてたらしくて、急ぎ止血しつつ近隣の病院へ。
診察の結果、傷はあまり深くなくて、縫合して止める必要も無い。とのことで、テープと防水の保護シートを貼り付けて(最近の医学は素晴らしいですなぁ。閉鎖療法のやり方でしょうか。)おしまい。ということでした。

土曜日には再受診して様子を見るという事で……。

膝の切創という事で、屈曲位をとることができません(90°以上は禁忌とのDr.指示☜曲げると傷口が開くため)
……ということはですよ?

正座できませんやんΣ(゜д゜
いやはや、稽古、どないすんねや!?ってハナシでね。

ま、そんなんでね(どんなんや!?)これはサッサと立ち稽古に移れということかしら。
いやしかし、それでも舞台に座つく型があるんですけれども?……それは便宜上素っ飛ばして???

ま、こうしていろいろイレギュラーが発生してくれるので、退屈しなくて済みますね……。
アハハハ………(;^_^A

そういや僕も、夏休みに田舎に帰ってるとき、側溝に落ちて、側溝の一部を覆ってるグレーチング?だったか、鉄板の蓋の縁だったかで臑をザックリ切った事を思い出したのでした(--;)