さて。
この間の稽古は、息子に小猿の面(おもて と読みます。)を着けて跳ばせてみました。
実際に面を着けると、極端に視野が狭くなりますし、呼吸も多少苦しくなるものです。ある程度はその感覚になれておく必要があると思ったからでした。
息子はお祭りなんかのプラスチック製のお面をかぶったことはあっても、狂言面を着けた状態を具体的にイメージするのは難しいハズです。
善竹能舞台は、舞台の高さが「床の間」の高さに設定されています。通常の能舞台に比較するとはるかに低い設定です(能楽堂に足を運ばれた方はご存じかと思いますが、通常、客席床面より1m程度は舞台の床面が高くなっています。)
演者が舞台から落ちる……というのは、もちろん落ちた本人が大けがをする恐れもありますし、なにより演目が成立しなくなってしまいます。
たとえ「床の間(数十センチ)」の高さの舞台でも、やはりそこから落ちるということは、あってはならないことです。
普段の稽古では、面を着け、視野の狭くなった状況を想定して、「動く範囲は舞台の縁から、これ(1m)ぐらいは内側で。」という稽古をしていたわけです。
しかし!インシデントが……orz
なんと、柱にぶつかりましたよ(;゜ロ゜)
……いや、これは、うっかり目を離していた僕の失敗でもあるのですが、紐をたぐる手元を見ているときに、シテ柱にぶつかっていました(コツン!と。)
だ、大丈夫か!?(面……!!)面!という言葉を飲み込んで(狂言方なら、きっと解ってくれると思うけど、とっさに思うのは、御道具が無事か!?ってことです。爆)すぐさまそばに駆け寄ったわけですが……。
息子、面ともに無事だったです(大汗)
息子に尋ねると「気がついたら、目の前が真っ暗だった。」とのこと。
おそらくは、体の向きを変えた時にはすぐ前に柱が迫っていたのでしょう……。
シテ柱の近くを跳ぶときは、大回りして、柱から広く幅をとって回り込みながら、橋懸かりへ跳んでいくよう言っていたのですが、視野が狭まったことで本人が知らず知らずのうちに、いつもより跳んでる距離が短くなっていたこと(それは、何となく僕も気づいていたのですけども)もあって、いつも通りに跳んだつもりで方向転換すると柱があったのでしょう(..;)
理由はともあれ、面と息子を危険にさらしたことは紛れもないことであり、僕に油断があったとの謗りは免れられません。
「見えないこと=無いこと」ではなくて、見えなくてもそこに障害物はあり得ること、舞台の柱の位置などから自分の居場所をイメージすることを、きっと教えていかねばならぬのでしょう。
来月からは、大名(我が師)と合わせての稽古も始まりますが、さらに気を引き締めて臨みたいと思います。