その祖父の行跡を、今改めて一覧にしてみますと、結構な艱難辛苦があったであろうことは想像に難くありません。(詳しい内容は、当日、お越しの方にのみお配りするパンフレットに記載します。)
祖父は長らく従軍していたこともあり、釣狐を披いた(披く:ひらく とは、初演するの意)のは復員後です。年は39歳。
その際、新聞社より取材を受けた写真が残っていますが、自ら釣狐の前シテ「白蔵主(はくぞうす)」と後シテ「狐」の面を制作し臨んでいます。(他にも、猟師が使う罠の「作り物」も、祖父の製作です。)
今回、僕は釣狐の披きにあたり、この祖父の打った面(おもて)を用います。後の狐は「切り顎」と言って、マズルの部分が演者の操作により開閉する可動式です。当然、犬歯がありますが、上顎の犬歯が下顎の陥凹部にコツン、コツンと見事に収まる、精巧な作りです(一種、病的な印象すら受けます。)
生前に、
「もうちょっと(面の内側を彫り削って)薄う、軽う作っても良かってんけどな。」と、ほろ苦く笑いながら申しておりましたが……。
「そやけど、面が分厚いぶん、少々ぶつけたかて、かまへんで。割れへんわ。」
さぁーて。その面(いや、祖父の?)の気迫に見合う狐になれますかどうか……。
0 件のコメント:
コメントを投稿
まいど!コメント、待ってます!!
(承認制になっていますので、反映には時間がかかる場合があります。)